イスラム国人質事件。パイロットの処刑ビデオを見た。全て作られたもの?! [ISIL]
イスラム国人質事件。「処刑ビデオは全部やらせ!」とのネット記事をいくつか読み、気になっていた。ネットであろうが、テレビ報道であろうが、それを鵜呑みにしたら危険。とくに事件となると、その裏でいろんな思惑が蠢いていることがある。僕は以前、ルポライターの仕事をしていたこともあり、今は映画の仕事。その辺がいつも気になる。
で、そのノーカット版、約20分もあるパイロット処刑ビデオを探し、見てみた。オープニングシーンから感じることだが、これは明らかに映像制作経験のあるプロの作品。単に処刑シーンを見せて残虐性をアピールするだけでなく、自分たちの思い、主張するためのプロモーション・ビデオとなっている。
ビデオ合成。編集。効果。確実にプロの仕事。それなりの機材を使って作っている。さて、問題の処刑シーン。ここが曲者だった。まるで劇映画のカット割り。カメラアングル! 僕は映画の仕事をしているので、ピンと来た。ただ、ドラマの演出家が担当したという訳ではなく、映像演出、編集のプロが映画風に撮影、編集したという感じ。
立ち並ぶイスラム国の兵士たち。そこにやってくるオレンジ色の服を着たパイロット。もう、このシーンからして違和感。兵士たちがいる場所とパイロットがいる場所は別の場所で撮られたものを合成してあることは一目瞭然。たぶん、パイロットはグリーンバックのスタジオ。兵士たちがロケ。グリーンのバックは簡単に抜けるので、合成しやすい。
そのあとにパイロットのアップ。そして兵士と兵士の間から見えるパイロット。これも、まるで映画。そして合成。映画ではこのように両者の位置関係が分かるようなカットを必ず撮る。そして、このように、いろんな位置から撮影することで、サスペンスが盛り上がる。ヒッチコックが得意とした撮影法で、モンタージュと呼ばれる。
1台のカメラで同じ位置から延々と撮影するより、カメラ位置を変えていろんな位置から撮影する方が劇的効果が生まれる。なぜ、そんなことをするか? それは「あーやめてくれ! 酷い」と見る人に思わせるため。
そして、次の場面はいきなり檻に入れられたパイロット。そして、ガソリンか何か発火性の液体がまかれたライン。そこに外にいる兵士が火を付ける。良く映画で見るシーン。火が液体のラインを伝わり、檻の中に、そして液体が染み込んだ兵士の服に燃え移る。いや、ちと違う、兵士自体に炎が移る。
この火はCGだ。今の技術はよく出きていて、映画で出てくる火災のシーンの多くはCG。つまり、コンピュターグラフィックス。実際に燃えている訳ではない。コンピューターで書き込まれたリアルな絵なのだ。パイロットを包む火もまさにそれ。通常なら液体が染み込んだ服が燃えるのに、彼の顔まで炎を発している。まるでハリウッド映画!
そして最後に燃え尽きて、倒れるパイロットは人形。あの程度の炎で人がボロボロになるまで燃えない。彼にかけられた液体の料も少なく、服に多少染み込んだだけ。顔や髪にはかけられていない。だから、全身丸こげで炭になるほどは燃えない。そして劇中で液体(ガソリン)を追加、かける場面はない。
そのリアリティのなさから、ドラマ演出のプロではなく、映像制作経験のある者がアメリカ映画をイメージして、撮影、カット割り、合成。演出したのだと思える。そして演出プランはサスペンスを盛り上げ、自分たちの残忍性をアピールし、敵国を挑発することだ。
このビデオ。映像のプロが見れば誰だって作り物だと分かる。同様の意見をネットでは見かける。それら指摘は大旨賛同したい。が、誰も指摘していないことがある。なぜ、パイロットを本当に燃やしていないのか?
もし、本当に殺害したことを伝えるなら、カメラは1カ所から手持ちで延々と撮影した方が、サスペンスは盛り上がらないが圧倒的なリアリティが出る。映画の世界でも「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」以来、あえてカット割りを減らし、モンタージュを使わず、手持ちカメラで延々と撮影してリアリテぃを盛り上げる手法を取り入れる映画が多い。
なのに、古いサスペンス手法を使って撮影。もし、やらせだとしても、手持ちカメラで延々撮る方がリアリティが出るはず。そこからも、プロのドラマ演出家ではないと言えるのだが、そんな面倒なことまでしてサスペンス映画のようなやらせ撮影をしている。残忍性を伝えるためだ。が、なぜ、やらせか? イスラム国側がパイロットを殺さないメリットは何もない。
後藤さんと湯川さんの殺害ビデオ。あちらも殺害シーンは一切映されない。これもネットで探して見たのだが、後藤さんの場合。覆面男がナイフを近づけ、2度ほど切る真似をする。明らかに刺さったり、斬りつけていない。血も出ない。後藤さんも顔を歪めたり、痛がる表情はしない。その内に画面はフェードアウト。次のシーンはもう、切られた首が胴体に乗っているあの写真だ。
湯川さんのビデオもほぼ同じ。どちらも首を切るシーンは映し出されない。イスラム国の人たち。「ネットに上げると子供も見るから、残酷なシーンは見せないでおこう!」と考えたのか? いや、残忍さをアピールすることが彼らの意図のはず。だったら、なぜ、2人の殺害シーンを見せないか? そして、最後の遺体写真も、どうも嘘くさい。
これもネットでは「偽物では?」という声をたくさん見かける。衣服に着いた血の量が少ない。後藤さんのズボンの色が処刑前の映像と色が違う。顔が作り物ぽいとの指摘。その辺も頷ける。なのに、政府はそれを鑑定することなく、「信憑性が高い」と声明を出しただけで、信じてしまった。当然、テレビではこの映像は放送できない。そして、鑑定した局もない。
検証番組も記事もなく、マスコミも殺害を皆、信じてしまった。どこかの誰かは遺体を引き取る要請はしないといいながら「テロリストには罪を償わされる」などと、事件を利用して思惑を進める。唯一、実際の映像を見たネットユーザーの一部が「やらせでは?」と記事を出しているだけだ。ただ、もし、本当は殺していない。やらせ。だとしても、イスラム国にとって何のメリットがあるのか?ということが疑問だ。
ネットでは共謀。つまり、人質がテロリストと通じていたという説を書く人がいるが、日本に家族がいる人たちが、そこまでする意味がない。二度と日本に戻れない、家族に会えないのに実はテロリストの仲間でやらせに協力したなんて、どう考えてもありえない。
では、何か? 実はひとつだけあり得る仮説があるが、それはまた別の機会にする。その前に、3つのビデオは「やらせ」である可能性が高いということを伝えたかった。特にパイロットのビデオは完全に作り物。しかし、この手の残虐な映像、画像はテレビで報じられず、政府やテレビが「殺害された」と報道。国民は疑うことなく、信じてしまい「イスラム国は酷い!」と怒りを爆発させる。
非常に危険。何事も伝聞だけで、人の意見だけで、信用して、同調してはいけない。自分の目で見て確認して、考えて、自分なりの意見を持つこと。大切。そこから、その理由を考えて行くことで、隠された現実が見えてくるはずだ。
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