2014年12月21日
「どうせ***しても無駄!」と言いがちなあなたに。「美味しんぼう」事件で感じたあの苦い話!

「美味しんぼう」の最新刊が発売された。「福島の真実編ー下」雑誌掲載時に話題となったエピソードが収録された巻である。改めて読むと、福島のこと、原発事故のこと。もの凄く調べているのを痛感する。
メジャー漫画雑誌でここまで切り込んだのは本当に凄いことだ。が、掲載当時にあちこちで書かれたブログやFacebookを見ていて、非常に気になるものがいくつもあったこと。思い出す。
「福島で鼻血を出している子供なんかいない!」という批判も多かった。が、批判より、むしろ応援している文章を読み、首をかしげるものがあった。「美味しんぼうーは勇気を持って真実を描いたが、多くの批判と圧力を受けて連載中止に追い込まれた」というような文章。
これは事実誤認。連載中止にはなっていない。このところ「美味しんぼう」は不定期の連載。もともと毎週連載ではない。「福島の真実」の掲載が終われば、またしばらく休載というのは最初から決まっていたことだ。たぶん、編集部は批判や抗議を予期して掲載したのだと思える。

なのに、それを「批判と圧力で連載中止に追い込まれた」と書くブログやFacebookがいくつもあった。それも「連載中止に追い込まれたらしい」とか「****と聞く」という伝聞表現ではなく「中止に追い込まれた」と断定で書いている。
その人はどこのニュースを読んで、そんなことを書いたのだろう? そう思い、いろいろと読んでみたが、「連載中止」と書いた新聞も雑誌もない。それどころか編集部談として「休載は最初から決まっていたこと。批判を受けた対応ではない」との記事も見つけた。
とすると、先のブログは何を見て「連載中止」と断定したのか? たぶん、何も調べず「思い込み」で書いたのだ。翌週号に掲載されていなかった「やっぱり、抗議殺到で打ち切られたんだ!」と勝手に思い込み、記事を書いた。

或いは「打ち切られたようだ」と推測で書くべきところを、何の根拠もないのに、「連載を打ち切られた」と書いてしまう。ま、マスコミ関係の人ではないし、一般の人が時事を伝えるときに陥りがちなミスなのだけど、それは駄目だと思う。
ブログとはいえ、その気になれば1000人、10000人が読む可能性がある。知らない人が読めば「え? 美味しんぼうー打ち切り!」と信じてしまうかもしれない。さらにこう思うだろう。
「やっぱり原発を題材にすると、圧力がかかり、人気漫画でも止められてしまうんだ...」
それでなくても、多くの人は原発問題に触れたがらない。が、この場合は明らかに誤解。なのに、そんなふうに思う人が大量に出てもおかしくない文章だ。
さらに、それを書いた人の文章を読めば、「原発問題に触れたらこうなる!」ということが言いたいのではなく、「美味しんぼう」の勇気を讃えている。だが、推測を断定として書かれた、その文章では結果として、「原発問題に触れると酷いことになる!」と部分が一番強く伝わってしまう。

つまり、思い込みで、事実でないことを、断定した文章をネットに上げることで、作者の意図とは違って、ネガティブキャンペーンをしているのと同じなのだ。
これがネットのない時代に、友達に伝えるだけならいい。が、今の時代、自由に文章を書いて、簡単にUPできてしまう。それが間違った事実でも多くの人に拡散される。僕も似たような思いを何度もしている。
「朝日のあたる家」も原発事故を題材にした映画。今年3月に、映画館公開が終わり、ようやくレンタル上映が解禁になったことをネットで告知した。これで一般の方、サークルや団体でも自主上映してもらえる。その記事を読んだある方が、僕の記事をシェア。コメントを添えていた。
「やはり原発を扱ったものなので、映画館では上映できなかったので、自主上映に踏み切ったのですね? 悔しい気持ちはよく分かります。でも、諦めずにがんばってください」
はあ? おっさん、何いうてんのぉ? 日本全国27館の映画館で公開が終わったから自主上映募集をしたんだよ! ちゃんと告知を読んで? と、その人のFacebookに丁寧な文章で御返事。説明をしたが、反応なし。たぶん、本当にたまにしかパソコンを開かない方なのだろう。未だに「勘違いでした。すみません」という返事はない。

先の「美味しんぼう」記事を書いた人と同じ。どこにも書かれていない事実を勝手な思い込みで「映画館上映はできないかった」と断定して記事にしてしまう。それを読んだ人は「ああ、この映画も原発を扱ったから映画館で上映されなかったんだ....やっぱり原発はタブーなんだよなあ」と思ってしまう。よくないことだ!
が、「朝日」は全国の映画館で公開。各地でヒット。多くの人が見てくれた。もはやタブーではない。なのに勘違いおじさんの記事を読んだ人は「やっぱりタブーだよな.....」と事実ではない認識をする。シェアしたおじさんに悪気はないが、これもネガティブキャンペーンと同じ。
誹謗中傷の記事より、ある意味タチが悪い!そして、この種の勘違い記事がどんどん増えている。そして、そのほとんどは、僕の映画を応援してくれる人である。
他にも「自主制作映画ー朝日のあたる家。***ホールで上映」とかツイートする人がいるが、「朝日」は自主映画ではない。プロの俳優とスタッフが作り、映画館で上映される商業映画である。
自主映画というのは基本学生やアマチュアの映画好きの人たちが、製作を自腹で出して作る映画のこと。基本、映画館では上映されず、自分たちでホールを借りて上映する。原発だけでなく、人権、差別問題を扱う作品にはその手の自主制作が多い。ツイッターの主はそう思い込んだのだろう。

だが、その手の映画。正しい主張はしているが、説教臭いものが多く、低予算で、有名俳優は出演せず、彼らのお芝居も今イチであることが多い。「朝日」はそうではなく、一般の商業映画として作り、普通の娯楽映画と同じように見てもらえる形で作ってある。
だのに「自主制作映画」などと、事実でないことを付け加えてツイートされるのは、これもネガティブキャンペーンと同じ。それでなくても、その種の「お説教映画」と思い敬遠する人も少なからずいるのだ。そして、悲しいのは、そのツイートの主もまた、映画を応援してくれている人であるということ。
「美味しんぼう」を応援する記事やツイッターを見ていて、そんなことを思い出した。「朝日」もまた多くの方の応援で、日本を超えて世界に広がった映画だ。今も感謝している。が、その中には応援のつもりでネガティブ・キャンペーンをしている人も少なからずいる。ネットで検索すれば、事実かどうか? 確かめるのは簡単。思い込みだけで記事は書くことの危険性。考えてみてほしい。
同時に、それは物事を見る目が試されていることでもある。「どーせ***なんだろう?」という思い込み。そう先の選挙で「どうせ、私が投票しても何も変わらない」と思い、あの党を勝たせてしまった人たちも、同じ「勝手な思い込み」に陥っているといえる。それに気づくだけで、世間の見え方も変わってくるはずだ。

Posted by 見廻りくま at 14:50│Comments(0)
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